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愛知県名古屋市の平和公園に隣接する「名古屋市動物愛護センター」。目の前には十分な広さのドッグランがあり、お散歩の時間には、職員さんに見守られながら楽しそうに走る犬たちの姿が印象的です。名古屋市は2016年度に犬の殺処分ゼロを達成し、大きな反響を呼びました。私たちが取材に訪れた際は丁度、中学生が動物愛護教室のため施設を訪れていました。平日ですが人の出入りが多く、明るい雰囲気の施設です。今回LEONIMALは、名古屋市動物愛護センターにお話を伺ってまいりました。犬の殺処分ゼロに至るまでの経緯や幅広い取り組みに対して全7回に渡り、インタビュー形式でお届けしてまいります。第七回は、殺処分数の中には乳飲み子や負傷した猫の収容中死亡が非常に多いことや、殺処分数の約20倍にもなる交通事故で死ぬ猫から浮かび上がる課題に関してお伝えします。

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島崎さん:猫の殺処分数399数の中には、収容中死亡も含まれます。

LEONIMAL(以下:LE):施設内で死亡してしまうケースのことですよね。

島崎さん:春先の寒い時期だと、あっというまに体温が低下してしまい、非常に厳しい状況になります。何とかしようと様々に対処しても、一晩経って全滅してしまったというケースは非常に多いです。健康だけど殺処分したというのは非常に少ないです。ただ、やはり高齢の猫は若い猫よりも里親さがしが難航します。これだけ子猫がいると、みなさん子猫がほしいのです。犬の場合も、子犬がいなくなるまで成犬は見向きもされなかったのです。成猫は他の猫と比べて何かセールスポイント、たとえば若いとか、血統書つきであるとか、とても性格がおだやかであるとか、何らかのきわだった長所がないと子猫が多いシーズンには戦えない。ですので、春から夏は成猫にとって厳しいシーズンです。

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LE:春から夏が繁殖のシーズンということで、猫を飼うことを検討している方は秋冬ではなく、春夏に猫を探すことを勧めたいです。

島崎さん:すごく懐きやすい子猫と、13歳おばあちゃんで気難しくてちょっと心臓病を比べたときにどうでしょうか。すごく懐きやすい子が選ばれるのです。ですので、大人の猫というのはなかなか居場所がないのです。

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LE:ある程度子猫が減った先に、成猫の譲渡というのも当たり前になっていくのかもしれないですよね。自活不能猫の収容数が679頭とありますが、自活不能猫というのは乳飲み子のことでしょうか。

島崎さん:そうです。生まれたての猫のことを自活不能猫と呼んでいます。野良猫の母は結構シビアで、育たないと分かった段階で、育児を放棄し置いて行ったりするのです。病気などで不衛生な状況の子などです。

LE:厳しい世界なのですね。

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島崎さん:はい。収容中死亡というのは、乳飲み子だけではないです。どうしようもならなかったという子もいます。やっぱりここの数字を見ていただけると分かると思うのですが、負傷動物162頭の内、返還できたのは2頭、譲渡が31頭です。そうするとあと残りどうなったのかと思いますよね。みんなここで死んでしまったのです。

LE:負傷して、センターに運ばれた時には、かなり厳しい状況だということですよね。

島崎さん:そうですね。ここに運ばれた時に死んでしまった子もいますし、神経症状が出ているような子の安楽死というケースもあります。

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LE:猫の場合は負傷や乳飲み子が圧倒的に多い。やはり飼い主さんの室内飼いの啓発と、避妊去勢が必要ですよね。

島崎さん:雄猫であってもかならず去勢してほしいです。飼い主さんがしらないうちに、他の猫を妊娠させて、生まれた子は死亡するケースもあります。また交通事故に遭うケースもあり、その先の殺処分数に加担している可能性というのも考えていただきたいです。自分のところで生まれなきゃいいという問題ではないのです。また、FIV(猫後天性免疫不全症候群)は避妊去勢していないことによってケンカで感染することもあります。

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LE:避妊去勢をしないと、猫にとっても負担になる可能性もあるということですよね。

島崎さん:そうですね。ですから、どうしても飼い猫の子どもを育てたい、たとえ先天的な問題があっても育てたい、譲渡できなかった場合に最大6頭ちかくの猫が自宅に増えても飼い続けることができる、という明確なビジョンがない限り、避妊をせずに飼うことは猫にとってもよくないのです。

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LE:交通事故と乳飲み子が殺処分数に大きく影響しているのは意外と知られていないのではないでしょうか。

島崎さん:そうですね。都会なので、殺処分数よりもずっと多い数の猫が路上で死んでいるというのが現実です。車にひかれて死ぬ猫が非常に多い。猫の殺処分数の約20倍です。年間で約6000体の死体が出るのです。どちらかというとその対応の方が必要なのではないかと思うぐらいです。

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LE:路上で死ぬ猫と殺処分される猫、いずれも同じ命ですよね。

島崎さん:そうですね。完全室内飼育をすれば、交通事故死もなくなり、近所トラブルもなくなります。都会の生活スタイルを考えると室内飼いの方が良いのです。

LE:名古屋市では、猫を外に出す飼い主さんがまだまだ多いのでしょうか。

島崎さん:そうですね。犬の場合は、狂犬病予防注射で一年に一回啓発の機会があります。でも猫は犬のように登録する必要がなく、健康であれば、飼い主さんに医療機関などが一度も接触することがないのです。登録がないということは、誰が飼い主さんか分からないので、どこに啓発をしていったらいいのかターゲットを絞れない為、犬に比べて後れを取っているというのが現状です。

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第一回「小さな努力の積み重ね。名古屋市が犬の殺処分ゼロを達成した理由。」
第二回「一人の志高い人だけが頑張るのではなく、地域全体が少しずつ変わることが大事。」
第三回「名古屋市の野犬は数年前に払底。捕獲犬の返還率67%でもあとの33%はどこからきたの?」
第四回「引取り原因の1位が病気・入院・死去。高齢化社会の影響がペットにも。」
第五回「譲渡されにくい子ではなく、譲渡されやすい子をボランティア団体さんへ。 」
第六回「顔を見ちゃったからと言って選ばなくていい。あなたがもらっていかなくても処分しないから大丈夫。」
第七回「猫の交通事故死、殺処分数の約20倍。対策は室内飼いと避妊去勢。」


写真:服部たかやす
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PROFILE
1970年愛知県生まれ。写真家。早稲田大学教育学部国語国文学科卒。独学で写真を学び、雑誌専属カメラマンを経て、写真家として活動を開始。“人”を中心に、土地、文化、歴史、自然を重層的に捉えて撮影するスタイルで作品を製作。ドキュメンタリー的な視点を持ちつつ、フォトグラフィー、アート、デザインの間を往還する写真を撮り続けている。01年、動物愛護センターに集められ、譲渡を待つ子犬をテーマにした写真集『ただのいぬ。』(PIE BOOKS&角川文庫)を発表。05年、世田谷文化生活情報センター 生活工房で開催された写真展「ただのいぬ。展」は入場者5,000人を数え大きな反響を呼んだ。著書に『Do you have a home?』(ジュリアン)、共著に『写真以上、写真未満』(翔泳社)等。保護犬の存在を通じて犬と人との関係を考えるアートプロジェクト、「ただのいぬ。プロジェクト」の主宰。