動物の殺処分ゼロを目指す 獣医さんたちの取組み

犬が約28,000頭、猫が99,000頭。
この数字は、1年間で殺処分される頭数です(※平成25年度 環境省報告)。

そのうち犬で約5分の1、猫で半数以上がまだ離乳していない幼い個体。
新たな飼い主への譲渡や引取りに取り組む団体の増加や、動物福祉の啓発により、年々減少してきているとはいえ、まだ多くの命が生まれて間もなく殺処分に遭っています。

動物の命を大切にし、人と動物の共生を図るために必要なことは何か。
不妊去勢手術の側面から、動物の命に向き合う取り組みを進めておられる「特定非営利活動法人ゴールゼロ」の理事長 斉藤朋子先生にお話をお伺いしてきました。

次の悲劇を生まないために
獣医師・地域・教育の連携で人と動物の真の共生を目指す

LEONIMAL(以下L):現在の活動に至ったきっかけをお教えください。

ゴールゼロ 斉藤先生(以下 斉藤):
以前は獣医師として普通の問診を中心に行なってきたのですが、獣医師の太田快作先生(当法人副理事長)との出会いがきっかけで動物たちのおかれている過酷な現状を知りました。太田先生は学生時代に行き場を無くした犬や猫を保護し、新しい飼い主を探す「犬部」という非公認サークルを創設された方です。開業医となってからも、「病気ではなく動物を診る」をモットーに犬・猫の殺処分を目指す活動をされています。
動物のプロである獣医師だからこそできる社会貢献があるのだと知り、一緒にゴールゼロを立ち上げました。

L:殺処分ゼロを目指す上で、苦労や課題などは何ですか?

斉藤:当院(mocoどうぶつ病院)では野良猫の不妊去勢手術を最優先に運営しています。1日20頭もの手術を行うこともありますが、野良猫は繁殖力が高く、なかなか殺処分0には至りません。
野良猫の不妊去勢手術には、捕獲(Trap)→不妊手術(Neuter)→元の場所に戻す(Return)という活動、いわゆるTNRに携わっていただくボランティアの方々のご協力が不可欠です。地域のボランティアの方々へのせめてものフォローをという想いで、当院では、通常1頭につき2万円~3万円程度かかる不妊去勢手術を野良猫(または飼い主のいない猫)に限り4~5千円で行うことにしました。手術代のハードルを下げることでよりご協力いただきやすい体制を整えています。

L:様々な方のご協力があってこその活動なんですね。

斉藤:その通りですね。同時に将来に向けてのメッセージも発することが大事だと考えています。現在、私は東京都の動物愛護推進員も務めさせていただきながら、小学生を対象とした命の教室も行なっています。
また、動物のプロとして最前線に立つ獣医師の意識を少しずつでも変えていきたい、と獣医師向けのセミナーも実施しています。

TNRは動物にとって人と一生に一度近づく稀少なタイミング
動物・ボランティアの立場を考えた心配りが地域を変えると信じて

image (8)

L:TNRを行なう上で、注意されていることはありますか?

斉藤:捕獲時には、このような(写真)捕獲器を使います。TNRというのは、警戒心の強い野良猫たちにとって、人と一生に一度近づく稀少なタイミングなんですね。それが嫌な思い出にならないように、手術に直接関係する部位以外も体をキレイにしてあげることはもちろん、麻酔がかかっているほんのわずかな間にでもできること、身体検査やけがや傷の処置などを怠らないように努めます。

L:動物の心理になるべく負担をかけないようにするということですね。

斉藤:そうですね。また同時に、携わってくださるボランティアの方々の頑張りに感謝して、捕獲器もきれいに洗ってお戻しするようにしています。手術後の猫を戻す捕獲器はときに汚れていますが、なるべくきれいにしてお返しするようにしています。次の命を救う気持ちにつなげてもらうために大切なことだということを、携わる獣医師には伝えています。
小さな心配りこそが、地域のボランティアと獣医を結んで、地域全体の動物福祉を変革していくと信じています。

L:コミュニティを結び、連携を高める効果もありそうですね。今後の展望・夢をお聞かせください。

斉藤:
今まで情報に触れてこなかった方々へも広く情報発信をしていきたいですね。
動物と人の共生のためには、動物が好きな人達だけで完結するのではなく、動物が苦手な方々への配慮も大事だと考えています。
動物との関係構築が単なる猫可愛がりではなく、きちんと命と向き合い、様々な方がいる社会で真の共生を実現するために必要なことを、広く伝えていきたいと思います。


特定非営利活動法人ゴールゼロ
Webサイト:http://members3.jcom.home.ne.jp/0143364202/index.html

2008年11月発足。殺処分ゼロを目指す獣医師グル―プで活動をスタート。
地域ねこ活動を行うボランティア団体と連携し、飼い主のいない猫への低料金での不妊去勢手術を推進。また動物のプロである獣医師向けセミナーも行ない、意識変革にも取り組んでいます。

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