成城の閑静な住宅街にある「成城こばやし動物病院」。飼い主と動物の幸せを第一に考えた、地域に密着した「ホームドクター」として愛されているのが、院長の小林元郎先生です。
前回(インタビュー前編)に引き続き、小林先生のインタビュー後編をお届けします。ペットとの同行避難時に心がけるべきことや日頃の備え、そして先生のこれからの展望についてもお伺いしました。


LE:災害時に避難所などに連れて行った時にも、しつけができているのといないのとでは全然違いそうですね。

小林:もちろんです! 災害時の避難所は非常に特殊な環境だということを理解していない飼い主さんが多いのですが、実際は赤ちゃんが泣いただけでもトラブルになるような環境なんです。そして動物を飼っている人も災害弱者になる可能性はある。家族に障害を持っている人や高齢者がいるのと同じなんです。そこをきちんと考えておかないといけないですね。避難所にいられないから動物と一緒に車で避難生活を送って体調不良になる人もいる。そういうことを踏まえて、自分に合った避難イメージを持っておきましょう。

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LE:避難の時にはペットキャリーに入れて連れていくことが多くなると思います。そういう可能性も考慮に入れながら開発したのが、私たちのリュック型ペットキャリー「GRAMP」です。

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小林:これは非常によく考えられていますね。ケージとして利用することを考えて拡張することもできるし、吸水ボトルを設置することもできる。キャリーバッグを押入れにしまい込んでいる人は多いと思うのですが、それでは意味がない。普段からリビングに置いておいて、慣れさせておくことが重要なんです。その点、「GRAMP」はインテリアの一部としても違和感がないデザインなのがいい。常にここで寝たり、遊んだりする習慣を作っておければいいと思いますね。

LE:他に災害時に備えて心がけておくべきことなどはありますか。

小林:とにかく心に留めておいていただきたいのは「人が助からなきゃ駄目」ということです。東日本大震災の時に言われた「津波てんでんこ」のように、大地震や津波が来たら取るものも取りあえずてんでんばらばらに逃げろ、自分の命は自分で守れ、ということ。とりあえず、最初の3日間つまり7_2_時間をご自身のペットと共に生き抜いてください。それと、医療データをちゃんと持っておくこと。普段からスマホなどを活用して管理しておけばいいんです。いざと言う時に「これです」と見せると早いですからね。
もちろん、マイクロチップを入れておくとか、狂犬病の注射を打っておくなどということは大前提です。

あとは食べ物のこと。災害時に配給されるものには限りがあって、特に猫などは食べられないものも多くなってしまうと思います。そんな時に思うのは、普段から何を食べても美味しいと思うように習慣づけることが大切ですね。そうじゃないと、何もないところに放り出された時にどうにもならなくなってしまいます。

猫の場合、キトントレーニングといって大体生後2ヵ月くらい、離乳の頃に口にしたものは一生食べられるという習性を利用して、この時期にいろいろ食べさせておくことは大事。あと、キャリーやケージの中で餌を与えることを考えて、離乳期にシリンジ(注射器の筒)から食べさせることを覚えさせておくと便利です。猫や犬の脳はアーカイヴ能力が高いので、一度経験したことはわれわれ人間以上に覚えていますから。

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LE:あと、慣れない環境でストレスがかかり、興奮したり弱ったりしてしまうこともあると思いますが、そういう場合はどうしたらいいんでしょうか。

小林:必要に応じて鎮静剤などの薬を使うという選択肢もあると思います。今では安全な薬もありますから。普段からサプリメントなどで薬を飲む予行練習をしておくといいかもしれませんね。あと、とにかく大事なことは人間がパニックにならないことです。避難している時は飼い主さんが頼りですから。

LE:では、小林先生の今後の展望などもお聞かせください。

小林:今一番興味があるのは食事や栄養のこと。食生活の乱れで病気になる動物は多いんですよ。そこで、食事としての生肉の可能性に着目しています。ただ、この分野の専門家が日本にはいない。そこで、今年の4月に海外から動物の栄養学の専門医を招いて基調講演をしてもらい、栄養学に関する研究会を立ち上げたいと思っているんです。

それと、先ほどお話ししたトレーニングのこと。私たちが間に立って、飼い主さんとしつけ教室などを繋げる活動を始めたい。食事とトレーニングによって、飼い主さんと病院の距離がもっと近くなるんじゃないかな。あと、当院で1年以上前からスタートさせている、犬猫を病院まで連れて来るのが困難な方のための「犬猫の無料送迎サービス」にも力を入れていきたいですね。

最終的には、動物を飼うことが「命のあるホビー」となってしまっている状態から脱して、動物が自然に存在する社会になってほしい。そのために私も頑張っていきたいと思っています。

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小林元郎先生 _PROFILE
成城こばやし動物病院 _院長。公益社団法人東京都獣医師会 業務執行理事、先生動物医療研究会 副会長、東京城南地域獣医療推進協会 _理事を兼任。“ペットと共に健康的でハッピーに”をテーマとしたF_M_番組「ペット・ワンダーランド」(FM世田谷 83.4MHz_)_も好評。

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